どこまで、のぼる?

先々週の土曜日に、O君が

  • 人は知れば知るほど不幸になる 情報がなければ人が持っているものをうらやましがって辛い思いをしたり、手に入らないものを望んで苦しんだりしなくてすむのに

というような主旨のことを言った時に、ふと思い出したハワイの言い伝え、のような話。だった気がする話。(詳細はかなり曖昧なので主旨をくみとってください)

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あるところに、三人の兄弟がいた。ハワイのきれいな海辺で、三人は大きな岩を授かり(誰からだろう?)、それを転がしていって、自分がいけるところまでいったらその岩をおいた場所でくらしていいよ、と言われた。
そこで、三人は海辺からスタートして、転がし始めた。ごろり、ごろり。ごろり、ごろり。
しばらくいったところで、一番下の弟が言った。「僕はここでいいよ。ここに暮らすことにする。」海から少し離れたその場所で、弟は魚介やらなんやら豊富な場所で暮らし始めた。やがて、奥さんももらい、幸せに暮らした。
弟が定住の地を決めてからも、あとの二人は転がし続けた。「僕たちは、もうちょっと先までいってみるよ。もう少し高いところに行ったら何かが見えるかもしれないから。」
そして、ごろり、ごろり、山を登っていった。やがて視界は開け、二人の眼下には、三人がもといた海や、弟の暮らす海辺、そして今までは知り得なかった丘の向こう側が見えるようになった。
山の中腹まで来て、二番目の弟が言った。「僕はこのあたりに暮らすことにする。海も見えるし、丘の向こうも見える」と。草木が豊かに生い茂るその場所で、彼は暮らし始めた。やがて奥さんももらい、幸せに暮らした。
一番上の兄は、弟が定住地を決めたその場所から、さらに進むことにした。「ここまででこれだけ視界が開けるなら、もっと上ならもっと世の中のいろいろなものがみれるかもしれない」と。そして、彼は一人岩を転がし続けた。ごろり。ごろり。やがて、山のてっぺんまでたどり着いた。彼はそこを定住の地と決めた。
その場所は、荒涼として草も生き物もあまりいない場所だった。だけど彼は幸せだった。彼は世界が見たかった。そしてその場所からは、海辺にいた頃には見えなかった世界の遠くまでが、見ることができた。

三人は、それぞれ幸せな暮らしを手に入れた。それぞれが、望むものを手に入れた。

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この話をどう解釈するかは、きっと人それぞれだと思う。


どこまで、登るか。


見たいと思う。自分の知らないコト、モノ。世界。
だけど、それは一方で何かを手放すことかもしれないし、実はリスクを伴うものでもあるのだと思う。
O君の言う通り、情報がない方が幸せ、というのもわかる。上まで登ったら何かが見えるというその情報が人の欲をかき立ててしまう。そこが荒涼の地という情報はなしに、期待だけが舞い降りてきて、それを追い求めているうちに自分が本当はもっと大事にしたかったものが指の間をすり抜けていってしまうのかもしれない。

上のハワイの話ではみんな結果として幸せになっているからいい。
だけど、現実はどうだろう?


さて。
どこまで、のぼる?