幸福時間


気がついたら、前回書いてから早3週間。
あっという間に時は過ぎ、突風の中で翻弄されてるような感覚。まだ、そんな気持ち。


ただ、2か月が過ぎたところで、たまたま先週一瞬仕事が落ちついた気がした瞬間があった。そして早く帰れた。が、まっすぐ帰るはずがぶらり途中下車。
ひさびさにバーへ。
前から気になっていた下町のバーへ。
どうしても、今すぐバーへ。
・・・とまたおひとりさまをしに行きました。


一人でバーのカウンターに座って、最初の一杯をバーテンダーさんに相談した。話しながら、ゆっくりとバーの空間に落ちていく。お店のお勧めと自分の気分が重なった最初の一杯が作られていく様子を見守る。グラスが選ばれ、お酒が注がれていく。そのバーテンダーさんの手の動き、その周りの空気の動きに気持ちが巻き取られて、日常からだんだんと遠ざかっていく。そして目の前にグラスが置かれる。一口含んだら、もうすべてを忘れて幸福時間。ちょっとしたものをつまみながら、ゆっくりと一杯目をあけた。
二杯目は、さっそく大好きなウィスキーに移行。スモーキーかつシェリー樽、と相談して選んでもらった。飲み方は、ストレートにチェイサー。ストレートが注がれる小さめのグラスが大好きで、今回はどんなグラスかな、とわくわくして注がれるのを待つのは至福の間。薄いガラスが心地よく、一口目を口にして、愕然とした。ウィスキーがおいしくなかった。思えば3ヶ月弱、ウィスキーを飲んでいなかった。その間に、ウィスキーの飲み方を忘れてしまっていた。口への入れ方、口の中での転がし方、チェイサーの含み方、そういったものが実は無意識に自分スタイルがあったことに気づき、忘れていたことに驚いた。3ヶ月ぶりの自分の好きな“くせのあるウィスキー”は、舌とのどに痛かった。それが悲しかった。
そんな私の表情を見て取ったのか、バーテンダーさんがストレートに少しずつ足してみてください、とチェイサーとは別に、綺麗なグラスに水を注いでくれた。この心遣いがにくい。それでストレートを少し和らげ、ちょっとずつ飲んでいたら半分くらい飲んだところで体が楽しみ方を思い出した。ちょっとしたことなんだけど、一緒に空気を口に入れたり、飲み込む前に口の中に広げたりしていることに気づいた。
そして、ウィスキー二杯目。疲れた体が甘めを欲していることがわかり、マッカランのような、と言ったら「マッカランじゃつまらないから」とやわらかいけど別のものを2つ出してきてくれた。こういうの、さすが、と思う。今度のは名前をわすれちゃったけど、おいしかったけど、ウィスキーの楽しみ方を思い出した舌からするとすこーし、物足りない。コクというか、重みというか。
そんなことをふむふむ考えながらゆっくり、時々バーテンダーさんと話ながら飲んでいるうちに、最初は私を含めて二組しかいなかった店内が混んできていた。カウンターは、いっぱい。左には男性二人組、右には常連さんぽい男性一人が座っていた。
私がふむふむ飲んでふにふにバーテンダーさんとウィスキーについて話をしていたら、右隣のFourRosesを飲んでいた男性が話しかけてきた。ウィスキーって色々あるんですなあ、的な。バーテンダーさんが言うには、どうもバーボンを飲む人はひとつに決めている人がおおいけど、ウィスキーが好きな人はいろいろ飲むのがすきなんだとか。確かにそうだ、と酒好きの与太話をごにょごにょとしていた。こういう話がお客さんとバーテンダーさんとが自然とできる雰囲気も、しあわせなバーの条件だなあと思う。
そんなこんなでぽちぽちと話していたら、たまたま結構知り合いの多い企業の人だったのでいくつか知ってる人の名前をあげていたら、なんと一人が部活の後輩とのことで、一気に盛り上がりアツく仕事や会社などの話に。こういう偶然もまた楽しい。
年齢的には大先輩なこともあり、「部活の後輩の友人ということで」と最後の一杯をご馳走になりました。そのお店の女性バーテンダーさんが勧めてくれた最後の一杯は、OBAN。初めて飲んだけど、そのときに欲していた味にぴったりだった。
しあわせな時間、at the bar.
こういう空間を持っているのってしあわせだなあ、と思う。


本当はほかにも「最近のしあわせ」を3本柱くらいで書くつもりだった。
だけど、ウィスキーのしあわせを書いてもう今日はおなかいっぱい。
そんな、酒好きの与太話。