夏の終わりに


海に行ってない。
ここ数年、海に行ってない。夏の海に。
だけど ああ 夏なのに海にいかなかったなあ、と残念に思う気持ちは
年々減ってきているような気がする。なぜだか。


夏に花火を見に行けなかったら、きっとすごくその夏を後悔する、
と思う。なぜだか。

だけど、海よりも花火が好きだというわけではなくて、
海には気が遠くなるほど好きな時間がある。
夜の終わり、だけど、陽が登るうんと前の、うすくグレーがかったうすいブルー、
だけどやがて来る暁をほのかに感じさせる、少しだけ明るさのさす、
透明感のあるうすいブルー、大気と海が境界なくまじってしまいそうな
そんなブルーに、空 がなる時間。


その時、砂浜にいるとなんだかすごく強い孤独感を感じるのだけど、
ちっとも寂しくないというか。何か、じゃなくて 漠然とした 存在 という
ようなものを感じるような気がする。


夏の真ん中に、
朝まで起きていて、網戸からさっと朝の印象が吹き込んだ気がして
ベランダに出たら、空はうすくグレーがかったうすいブルーの空だった。
そして、うすいブルーを少しずつ、黄色い日差しが割って行った。


夏のはじめに、
行こうと思っていた花火大会は行けなくて、だけどきっと予定通りのことばかりだと
できあがりはきっとオモシロイものじゃない ってことを教わった気がする。
いろんな意味で。最初に想像できることはその程度でしかなくて。


夏の終わりに、
海と花火を思う。自然と人工物。
どちらも、とても強い力を持つ。心を動かす力を持つ。うあぁぁぁ  と。
ずっとこの二つ(自然と人工)は対立構造にあるように思っていた気がする。
だけど、そうじゃないんだなあ とようやくちょっと腑に落ちてきた気がする。


夏の終わりは
切ないような、名残惜しいような、ぎゅっと胸を締め付けられるような
そんな気分にさせる。なぜだか。なぜだろう。