生身の人間


本日開始の劇団四季「ジーザス・クライスト=スーパースター」を観に行った。
於、浜松町「秋」劇場。


オペラ座の怪人、キャッツ等数え切れないほどのすばらしい
ミュージカルの音楽を生み出した巨匠アンドリュー・ロイド・ウェーバー
彼がずっと以前に制作したこの楽曲、ミュージカルを日本に持ってきて
四季の浅利慶太が独自の演出をほどこしたこの作品。
信じられないほどの簡素な舞台装置で、和の様式美、楽器、衣装の中
歌舞伎様の隈取りをまとった役者の顔がうかびあがる。

物語は、イエスキリストの最後の7日間を描いたもの。
歴史上、もっとも崇高な人(でもあり神でもあり)として人が
イメージするキリストとそのまわりを取り巻く使徒たち。
だが、本当はその人達にも人格があり、感情があり、
愛情、怒り、憎しみ、妬み、そういうものをぐっちゃぐちゃに
持っている生身の人間だったのだ。
その生身の部分を照らして、最後の7日間を描いている。


登場する「群衆」は、当然ながら移ろいやすく、弱いものとして描かれている。
だけど同じくらい、弱い。
使徒たちも、ユダも、ジーザスも。
みんな、人間だから。


これを突きつけるこの舞台のテーマは、初演当初はさぞかしドラスティックだったろう
と思うが、この舞台にてもう一つ賞賛されるべきはヘロデ王の衣装。
ロビーに1970年頃のデザイナーのデザイン画があるのでぜひとも観てほしいが、
今観ても最高に新しく、圧倒的にかっこいい。
最近思うのだが、クリエーティビティーとは絵がウマいとか
ちょっとおもしろいとか、ちょっとセンスいいとかそういうものではなくて、
「新たな視点」が見つけられるかどうかなのだと思う。
そういう、なんだか圧倒的な発想力の底力をビリビリ感じた。


ちなみに本日、マチネ公演の当日券。
公演初日のため事前予約分は売り切れていたが、
朝早めに行ったら当日発売分が残っていた。
2階席の奥で、ちょっと舞台がかけてしまう席。そのため、\3,000。
映画が\1,800と考えると、生身の公演でこれはすごいなあと思った。
ふらりと自転車で四季劇場まで来て、当日券でマチネを楽しむ土曜の昼、
というのが今後自分のレパートリーに入ってきそうだと思う。