「希望格差社会」★★★★☆


経緯:「下流社会」が売れてる時に気になって買ってあった


最初、誤解してました。タイトルの意味を、希望して格差がある社会=社会構造上格差ができているのではなく、人々がそれぞれのwillによって格差ができているのだと誤解してました。実際は、「希望」=hopeに格差が出ているのが現状なのだ、という話。

団塊の世代は、ちょっと努力すれば「目標」(=中流、安定収入、サラリーマン-専業主婦の家庭)に到達することがほぼ確実だったから希望が持てた。だからその安定を手に入れるためにちょっとでもいい大学にいこう、いい会社に入ろうと希望を持って努力することができた。
でも現状は違う。以前に比べて仕事が二極化していて(専門知識・クリエーティビティを要する仕事と単純作業)、雇用は「少数の正社員」と「大量の非正社員」というバランスに変わってきている。一方で、日本人の大学進学率は伸び続け毎年大量に大学を卒業する学生たちがいる。その彼らは以前のモデル(大学進学→「正社員」雇用→安定)を当然のこととして期待しているが、前述の雇用バランスの変化により彼らを「正社員」の形態で吸収するだけの雇用の受け皿がない。
仕事は人にアイデンティティを与え、社会から必要とされている感覚を得られる。そしてその充実感をもっとえようと人は努力をしていくことができる。「正社員」の形で仕事をスタートした人は、この好循環の中で希望を持って生きていける。しかしそうでない人、この感覚を得られない人が現状増えているし、これからも増え続けるだろう。そしてそれによって社会は不安定化するというのが著者の主張であった。
データやエピソードがわかりやすく、説得力があり納得性が高かった。
印象に残った言葉:
「強者連合」以前は教育は社会上昇のための回路であったが、むしろ今は固定化の原因になっている。つまり、強者(いい大学をでていい職業についている人)同士が出会い、結婚をして家庭を持つ。二人とも収入が高く社会的な強者で、こういう二人が組むことを強者連合と呼んでいる。その子供は親の知識水準や人脈、財力をバックに強者へと育っていく。その逆もしかり。つまり格差は固定化・拡大化していくという文脈。
「パイプライン」日本の教育システムについて表現した言葉。図もあり、とてもわかりやすい。

この本は、政治にかかわる人など日本社会を考える人にぜひとも参考までに読んでほしいと思った。
一つの視点として。