「木のいのち、木のこころ」★★★★☆

木のいのち木のこころ―天・地・人 (新潮文庫)


クリスマスプレゼントでもらった、文庫本。
(あ、半年たってようやく読み終わった)


最後の法隆寺宮大工・西岡常一とその唯一の弟子であり、宮大工を未来に
継承していくための鵤工舎という職人集団をつくった小川三夫の話。


口伝によってのみ伝えられてきた、日本という本当に四季の豊かで自然も豊かな
中で育まれた世界最高峰の木造建築技術、中でも1300年生き続けその間中多くの
人間のよりどころとなり宗教の中心となり文化を彩ってきた法隆寺の宮大工の、技術。
魅了されて弟子入りし、
食っていけなくてなにが文化だ、と鵤工舎をつくった小川氏。


書き留めること、記録することや
大事にしまって保存すること、では大事なことは本当には受け継がれていかない。
宮大工という日本の文化を本当の意味でつないでいった歴史があった。


本編を読んでいてなぜかとても自分の日々の考え方に影響を与える強いメッセージを感じた。


そんな魅力的な本編がありながら、本当の意味では本筋からはずれている二つの
ことが、とても印象的だった。
ひとつ。
鵤工舎の名前を付けるときに、幸田文氏に依頼をしたら、ほんとうに歯を食いしばって耐えなくては
いけないときにはやはり男性の耐える力が必要だ、だから名付け親は女であってはいけない、と
幸田露伴がいっていたというて断ったという話。
日本らしい考えなのか、わからないがなぜか強烈な印象を受けた。

ふたつ。
あとがきのように、あるときの祝賀会で西岡氏とその親族と、鵤工舎の職人たちが集まったことが
記されている。そのときのことばで、西岡氏のこどもたちが、本来であれば自分たちが受け継がなければ
いけない父親の技術をまったく関係のなかった小川氏、そして鵤の人たちが受けついてくれて、
本当は合わす顔がないくらい恥ずかしく、心から感謝しているということを言った。
生活できないから子供たちに跡を無理には継がせなかった最後の宮大工と、
そのことに複雑な思いを抱えた息子たちと、魅了されて苦行の道へ飛び込んだ人たち。